携帯料金は下がるのか。携帯会社の配当も下がる?

菅政権が誕生しました。さっそく携帯料金を下げると宣言しています。

首相、携帯料金の下げ指示 総務相、大幅減額に意欲
https://news.yahoo.co.jp/articles/57a8fd87a0fbbf7d1c544102b6dc760f04cfe118

携帯各社(ドコモ、KDDIソフトバンク)は、いずれも安定したビジネスモデルにより、増配続けてきましたが、にわかに先行きに不安が出てきました。
これを受けて、各社とも株価を下げています。
利回りの観点からは株価が下がるのは嬉しいですが、配当が維持出来なけれは元も子もありません。


菅政権は携帯料金を下げられるのか、どうやって下げるつもりなのか考えてみます。


菅氏は、携帯料金が高すぎ、携帯各社の営業利益率は不当に高いと考えているようです。
「私は、常々、世の中には国民の感覚から大きくかけ離れた数多くの当たり前でないことが残っている、このように考えてきました。省庁の縦割りによって、我が国にあるダムの大半は洪水対策に全く活用されていなかった事実、国民の財産の電波の提供を受け、携帯電話の大手3社が9割の寡占状態を長年にわたり維持して、世界でも高い料金で、20パーセントもの営業利益を上げ続けている事実、他にもこのような当たり前でない、いろいろなことがあります。それらを見逃さず、現場の声に耳を傾けて、何が当たり前なのか、そこをしっかりと見極めた上で、大胆に実行する。これが私の信念です。今後も揺らがず行っていきたいと思います。」( 令和2年9月16日菅内閣総理大臣記者会見)

菅氏は過去にも携帯料金の高さに言及しており、4割程度下げる余地がある認識しているようです。しかし、下記記事でも指摘されているように、4割の根拠となるOECDの調査は、単純に他国と比較できるような精緻なものではありません。

携帯電話料金4割引き下げは正しい指摘なのか?
https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/column/mobile_catchup/1140142.html

首相就任後、どの程度値下げするのかについて、菅氏本人からの明示的な発言はありません。
武田総務相が、「1割では改革にならない」と発言しましたが、「もっと健全な市場競争が果たされれば、1割以上の値下げも可能」と考えているだけだとし、具体的な目標はないとしています。

武田総務相、携帯電話料金に関して「『1割』というゴールを設定したわけではない」
https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1278161.html


一応、菅氏による過去の取り組みの結果、2年縛りの違約金の大幅値下げや他社への乗り換え手数料の無料化など、間接的な手数料の値下げは実現しています。ただ、携帯料金自体の値下げまでは進んでいません。

菅氏は、どうやって料金を下げるつもりなのでしょうか?
驚いたことに、携帯各社が国に払う電波利用料の値上げを考えているようです。

携帯値下げなければ、電波利用料「見直しやらざるを得ない」-菅氏
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-09-13/QGKKX1DWLU6F01

普通に考えれば、電波利用料というコストが上がれば、携帯各社の負担は増え、結果、携帯料金は値上がりしてしまいます。そうならないように、各社とも値下げしろよ、ということなのでしょうが、ちょっと無理筋ではないでしょうか。そもそも民間企業の料金設定に行政が口を出すことがナンセンスなのですが…

対して、武田総務相はもう少し常識的な路線で進めようとしているようです。
武田総務相、携帯料金下げ「国際水準目標に」
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO64096860Q0A920C2NN1000?s=5
「新たな事業者が参入でき、健全な競争が行われることが料金の引き下げにつながる。その環境をどうつくるかを真剣に考える」

あくまで競争原理を働かせることでの値下げを目指すようです。
今年の四月から楽天が第4のキャリアとして新規参入しており、これは菅氏の肝いりと言われています。しかし、楽天モバイルのゴタゴタをみると、新規参入は容易ではありません。

以上をふまえると、菅氏の携帯料金の値下げはあまり上手くいかないと思います。新規参入のハードルを下げるにしても、既存3社の脅威となるかは微妙ですし、なったとしてもかなり時間がかかるのではないかと思います。